
提供食料品の中で欠かせない食品のひとつであるお米。「お米の提供が嬉しい」と保護者から感想をいただきます。ひとり親世帯に提供するお米は雲仙市瑞穂町で作られています。
生産者の水元さんにお話をお聞きし、水田を見学させていただきました。
「美味しい」の言葉が一番のやりがい
食料品提供会では、1世帯に2kg(夏休み期間は3kg)のお米を提供しています。
登録しているひとり親家庭のために、毎月約130kgのお米が必要です。お子さん達に美味しいお米を食べて欲しいと食料支援活動に賛同していただき、米農家の水元さんから毎月購入しています※1。
提供するお米は、水元寛文さん、水元直子さんご夫婦が育てたお米です。提供日の2日前に精米したばかりの新鮮なお米を、雲仙市瑞穂町から届けていただいています。
7月末、夏真っ盛りの青空の下、水元さんの水田を見学させていただきました。
雲仙市瑞穂町は有明海と雲仙岳に囲まれ、アサリの養殖や雲仙岳の湧水で育てられたお米が名産です。島原街道と呼ばれる国道251号線から枝道に入ると、のどかな田園風景が広がります。
水元さんご夫婦が経営する「水元農園」は、この瑞穂地区でお米・野菜を育てています。
※1 提供するお米は一部寄付米を含むことがあります

「小さな農家です。お米は自分たちで精米管理をしています。そのため、米粒の大きさは不揃いになりますが、その日精米したてのお米をお客さんに届けています。お米は店に卸さず、個人と契約して販売しています。お客さんは人づてに紹介となり増えていきますね。自分たちで配達まで一貫して行っています。店に卸さない理由は、お米を購入してくださった方が、どのような方で、どのように食べているかを知ることが、生産者として大切だと考えているからです。お米を作っている人の顔や名前が見えるということは、お客さん側の安心にもつながります。今回の取材は、お米を作っている私たちの顔を保護者のみなさんに知っていただく良い機会となりました」。
高齢のお客さん宅への配達では、台所までお米を運ぶようにするなど、水元さんは、お客さんひとりひとりとの関係を大切にされています。
提供会に登録している保護者からは、お米が美味しい、とお声かけをいただきます。今まで寄せられてきた感想を水元さんにお伝えしました。お二人とも明るい笑顔で喜ばれていました。
「味が美味しいでしょう?お米の味には自信があります。お米の品種は『ひのひかり』。味が良く美味しいお米が育ちます。お客さんからは『冷めても美味しい』と言っていただけますね。冷めても美味しいお米は、本当に美味しいお米だと思うので、嬉しい感想です。米農家として『美味しい』の言葉が一番のやりがいとなりますし、嬉しいですね」。
見学した水田は、広々と見晴らしの良い平坦地にあり、青々と稲が育っていました。水田に水をひく水路では、綺麗な水が絶えず流れ、美しい場所です。水元さんは、安心・安全で美味しいお米作りに取り組んでいます。

「私たちの水田の広さは1丁(1ヘクタール)です。年間で約2500kgのお米を収穫しています。肥料や田植えの時期など、独自に考えてこだわってお米作りをしています。なるべく農薬を使う機会を少なく出来るように、減農薬栽培に取り組んできました。お米が出来るまでには、土壌作り、苗作り、田植え、稲刈りという工程があります。20日苗(はつかなえ)という言葉があるのですが、お米は種を植えてから20~25日育った苗で田植えを行うんですね。私たちは25日間ハウスで苗を育てた後、田植えを行っています。芽が出た苗が育ってくると、葉先に自然と水滴が付いてきます(写真㊤)。
根から吸い上げた水が葉先に表れているのですが、綺麗で可愛いでしょう?苗全体がよく水を吸って育っている様子なので、好きな風景です。今はすでに田植えを終えて、順調に生育していますよ※2。この後、8月末から9月頭にかけて稲の花が咲きます。稲刈りは10月です。収穫したお米は、もみすりをして、米専用冷蔵庫で保管しています。注文が入ってから、冷蔵庫内で精米をして納品しています」。
※2 取材日 2024年7月30日


「お米作りで大切なのは水です。さらにいうと、水の流れが大切です。瑞穂地区の水田には湧き水をひいています。雲仙山麓の地下水です。水が綺麗なので、水路(写真㊤)では、ほたるが飛ぶんですよ。近くに『岩戸神社』という水の神を祀る神社があるほど、昔から湧水の地として水がいい場所です※3。
水の流れが大切な理由は、美味しいお米を作るためには水温が大事な要因だからですね。堰き止めたり、溜めたりせずに流れ続けている水は、水が温まらないので、水温がいいんです。水の流れを一度も止めていない、綺麗な湧き水でお米を作ることが出来る場所は少ないです。
『瑞穂』という地名は、お米が美味しいところという意味です。ここの地区は昔から米どころでした」。
※3 “樹齢300年を超える檜や杉などの巨木に囲まれ、静かなたたずまいを構える水源の森。うっそうとした緑に包まれた岩戸神社は、古くから「岩戸さん」の愛称で地元の人々に親しまれている神社で、縄文人が住んでいたといわれている洞窟が御神体です。”「岩戸神社」ながさき旅ネット(https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/51685)
【住所】〒859-1205 長崎県雲仙市瑞穂町西郷丁2322番地

水元さんの育てるお米は、炊きあがると、きらきらと輝く光沢があり、良い香りがします。食感は柔らかく、粒のふっくらとした丸みが特徴的です。大きな口で頬張りたくなる味わいの美味しいお米です。
また、水元さんは、米作りの他に湧き水を利用した野菜作りに取り組んでいます。年間を通して出荷する野菜は10種類以上です。取材期間に出荷していた茄子やピーマンはみずみずしく、中身が詰まった重さがあり、丁寧に育てられた美味しい野菜でした。
「農業は難しいです。だから面白いと思っています。最近の夏の暑さで、お米も野菜も作りにくくはありますね。30歳ごろからお米や、当時はハウスミカンなども作ってきました。試行錯誤の日々でした。農家は、怖がらずにチャレンジする、次はどうすると考え続けることが出来る性格の人が向いていると思います。野菜の種類をいろいろ作っている農家は珍しいですよ。直売所に卸しているからこそ出来ていると思います。種類が多いと、育て方にそれぞれ工夫がいるため、作ることがおもしろいです。野菜は飲食店と契約して直接卸したり、長崎市ですと産地直売店※4に卸しているので、野菜の袋に記載してある生産者名に、私たちの名前を見つけたらぜひ食べてみてくださいね」。
※4 とれとれ旬家 浜町店
【住所】〒850-0853 長崎県長崎市浜町3-26

最後に、保護者の方へお伝えしたいことをお聞きしました。
「農家として、好き嫌いなく、地元のものを選んで食べて欲しいと思います。お米でも野菜でも『美味しかった』という感想を大切にしてください。子ども達には、お米を美味しく、しっかり食べて欲しいですね。美味しい食材、美味しい味を覚えながら、食事を『美味しい』と感じて食べていくことが、育っていくうえで一番大切だと思います。私たちが頑張って作ったお米をたくさん食べてくださいね」。
自分の子ども達にもしっかりお米を食べさせて育ててきましたね、と晴れやかな笑顔で保護者へのエールをいただきました。美味しいお米や野菜を届けたいという、水元さんの農業への熱意とこだわりを感じる取材となりました。


取材・写真|NPO法人らいぶながさき
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